長谷川式スケールは何点以下で認知症?質問項目とMMSEの違いを解説
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:長谷川式スケール(HDS-R)の最高得点は30点で、20点以下が認知症スクリーニングのカットオフ値(疑いが強い基準)となります。
- 要点2:MMSEが「図形模写」など視空間認知を含むのに対し、長谷川式は「記憶・見当識・言葉の流暢性」を言語中心で測るため、ベッドサイドや短時間で実施しやすい特徴があります。
- 要点3:点数は確定診断ではなく「疑いの強さ」を示す目安に過ぎません。失語や聴力低下、うつ状態による見かけ上の低得点もあるため、家族が無理に自宅でテストせず専門医を受診することが鉄則です。
【判定基準】長谷川式スケールのカットオフ値は何点?20点以下の真相と診断の目安
長谷川式スケール(HDS-R)は、精神科医の長谷川和夫氏らが1974年に開発し、1991年に改訂された日本発の知能評価テストです。全9問、最高得点は30点満点で構成されています。 臨床現場における最も重要な判定ラインが「カットオフ値」です。長谷川式スケールでは、20点以下を「認知症の疑いあり」、21点以上を「非認知症(正常域)」としています。臨床研究データによると、カットオフ値を20点に設定した場合、認知症患者を正しく陽性と判定する「感度」は約93%、非認知症者を正しく陰性と判定する「特異度」は約86%という極めて高いスクリーニング精度が確認されています。ただし、ここで最も注意すべきは「20点以下=認知症の確定診断」ではないという点です。長谷川式スケールはあくまで精密検査が必要かどうかをふるい分ける「スクリーニング検査」であり、脳血流SPECTや頭部MRI画像、血液検査、日常生活自立度の聞き取り調査などを総合して初めて確定診断が下されます。
また、医療機関では重症度の参考目安として以下の平均スコアデータが活用されています。- 軽度認知症:平均 19.1点 前後
- 中等度認知症:平均 15.4点 前後
- やや高度認知症:平均 10.7点 前後
- 高度認知症:平均 4.0点 前後

【質問項目一覧】改訂長谷川式(HDS-R)全9問の採点基準と記憶再生の仕組み
長谷川式スケールは、特別な医療機器を用いず、わずか10分〜15分程度の対話形式で実施できる点が大きな強みです。全9つの質問項目と配点、それぞれの評価目的は体系的に設計されています。- 設問1:年齢(配点1点)
「お歳はいくつですか?」と質問します。自分の年齢を把握できているかを確認します。なお、2年までの誤差は正解として扱われます(例:実年齢80歳の場合、78歳〜82歳の回答なら正解)。誕生日を迎えた直後や元号の切り替えによる混乱を考慮した合理的な基準です。 - 設問2:日時の見当識(配点4点・各1点)
「今年は何年ですか?」「今は何月ですか?」「今日は何日ですか?」「今日は何曜日ですか?」を順に確認し、時間の認識(時間的見当識)を評価します。 - 設問3:場所の見当識(配点2点)
「私たちが今いるところはどこですか?」と尋ねます。自発的に正しい病院名や施設名、自宅と答えられれば2点。出ない場合に「ここは病院ですか、家ですか、施設ですか」などのヒント(選択肢)を与えて正解できれば1点となります。 - 設問4:3つの言葉の即時記銘(配点3点・各1点)
「桜、猫、電車」(または「梅、犬、自動車」)という互いに無関係な3つの単語を聞かせ、直後にそのまま復唱させます。 - 設問5:計算(配点2点・各1点)
「100から7を引くといくつですか?」「そこからまた7を引くといくつですか?」と連続引き算を行います。作業記憶(ワーキングメモリ)と集中力を測ります。 - 設問6:数字の逆唱(配点2点・各1点)
「6-8-2」を後ろから「2-8-6」と言わせる3桁逆唱(1点)、「3-5-2-9」を後ろから言わせる4桁逆唱(1点)を行います。 - 設問7:3つの言葉の遅延再生(配点6点・最大各2点)
設問4で覚えた3つの言葉をもう一度思い出してもらいます。自発的に答えられれば各2点(計6点)。思い出せない場合に「植物」「動物」「乗り物」といったヒントを出して正解できれば各1点となります。初期アルツハイマー型認知症では、この設問の失点が最も顕著に現れます。 - 設問8:5つの物品記銘(配点5点・各1点)
時計、鍵、ペン、硬貨、スプーンなど関連のない5つの日用品を見せて名前を言わせた後、それらを隠して「何がありましたか?」と想起させます。視覚的な短期記憶を評価します。 - 設問9:言葉の流暢性(配点5点)
「知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください」と指示し、制限時間(約1分)内で答えた数に応じて採点します(0〜5個:0点、6個:1点、7個:2点、8個:3点、9個:4点、10個以上:5点)。前頭葉機能(語彙の検索力・想起力)を測定します。
【比較検証】長谷川式(HDS-R)とMMSEの決定的な違いとは?
認知症のスクリーニングにおいて、長谷川式と並んで頻繁に名前が挙がるのがMMSE(Mini-Mental State Examination:ミニメンタルステート検査)です。両者には明確な特徴と使い分けの基準が存在します。| 比較項目 | 改訂長谷川式スケール(HDS-R) | MMSE(ミニメンタルステート検査) | 臨床現場・編集部の評価 |
|---|---|---|---|
| 満点 / カットオフ値 | 30点満点 / 20点以下で疑い | 30点満点 / 23点以下で疑い | カットオフ値の基準が異なるため混同に注意が必要 |
| 検査の重点領域 | 記憶再生・見当識・語想起(言語性主体) | 視空間認知・書字・読字・指示動作(動作性含む) | 長谷川式は記憶の衰え、MMSEは頭頂葉機能の低下に強い |
| 図形描画・筆記課題 | なし(口頭での対話のみで完結) | あり(交差する五角形の模写、文章の筆記) | 手が震える高齢者や寝たきりの場合は長谷川式が有利 |
| 国際性・標準化 | 日本国内で広く普及(アジア圏一部) | 世界100カ国以上で使用される国際標準 | 国際治験や学術論文ではMMSEが標準採用される |
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【現場の実態】開発者・長谷川和夫氏の言葉が示す「点数至上主義」の危険性
長谷川式スケールを語る上で欠かせないのが、開発者である精神科医・長谷川和夫氏自身が残した貴重なメッセージです。長谷川氏は2017年、88歳のときに自らが認知症(嗜銀顆粒性認知症)であることを公表しました。認知症の第一人者が当事者となったことで、医学界と社会に大きな衝撃を与えました。 長谷川氏は自著や特番インタビューの中で、自ら作ったスケールについてこう述べています。「認知症になっても、その人の人格や感性が消えてしまうわけではない。検査の点数だけで人間を輪切りにしてはいけない。点数は単なる道具であって、大切なのはその人の暮らしと心がどう保たれているかだ」この告白は、臨床現場における「点数至上主義」への強い警鐘となりました。現場の専門医やケアマネジャーへの取材でも、数字だけを見て判定することの危うさが指摘されています。
現場で見落とされがちな3つの落とし穴
- 1. 加齢性難聴による聞き逃し:高齢者の難聴は非常に多く、質問内容が正しく聞き取れていないために「答えられない(0点)」と判定されてしまうケースがあります。
- 2. 検査への緊張・プライドの傷つき:「テストされている」というプレッシャーから頭が真っ白になったり、プライドを刺激されて拒絶反応を示すことで点数が著しく下がることがあります。
- 3. 高学歴・高知能者における「見かけの満点」:元来の知能や社会的スキルが高い方の場合、初期の認知症を発症していても25点〜28点以上の高得点を取ってしまうことがあり、早期発見が見落とされるリスクがあります。
【プロの結論】家族心理と「心理的バウンダリー」から見出すべき教訓
親の衰えを目の当たりにしたとき、子ども側は「しっかりしてほしい」という焦りから、詰問口調になったり無理に正解を言わせようとしがちです。しかし、家族社会学や心理療法の観点からも、過度な干渉や共依存的な関係は認知症高齢者の自尊心を深く傷つけ、「取り繕い(作話)」や「うつ状態・怒り」といった二次的な精神症状(BPSD)を引き起こします。
家族間に必要なのは、相手の衰えを過不足なく受け入れ、冷静に専門家へ橋渡しをする「健全な心理的境界線(バウンダリー)」です。テストの点数で白黒をつけるのではなく、「暮らしの困りごとを減らすための支援ツール」として検査を捉え直す姿勢が求められます。
【用紙ダウンロードと自宅実施の注意】家族が家庭でテストしてはいけない理由
インターネット上では、各自治体や公的医療機関のWebサイトから「改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)検査用紙」のPDFデータが無料でダウンロード・閲覧できるようになっています。 これを見て「病院へ行く前に、まずは家で親にやらせてみよう」と考えるご家族が少なくありません。しかし、専門教育を受けていない家族が自宅で長谷川式スケールを実施することは、原則として避けるべきです。家族による自宅テストをおすすめできない明確な理由
- 関係性の破綻と信頼の喪失:実の子どもから「100から7を引いてみて」「桜、猫、電車を覚えて」と試される行為は、親にとって屈辱的であり、強い不信感を生みます。
- 検査としての信頼性の欠如:教示文(質問の読み上げ方)のイントネーション、待ち時間、ヒントの出し方には厳格なプロトコルがあります。家族が行うと無意識にヒントを出しすぎたり、採点が甘くなったりして正確なデータになりません。
- 正確なスクリーニングの妨害:事前に自宅で練習してしまうと「学習効果」が働き、病院での本番検査で実態よりも高い点数が出てしまい、適切な医療的介入が遅れる原因になります。
受診を検討すべき「日常の変化」チェックリスト
家庭でテストをする代わりに、ご家族は以下のような「生活上の具体的な変化」をメモ帳に記録し、受診時に医師へ共有することが最も有効です。
- 同じ話を短時間に何度も繰り返す、数分前の出来事をすっかり忘れている
- 得意だった料理の味が急に濃くなった、品数が明らかに減った
- 冷蔵庫に同じ食材(マヨネーズ、納豆など)が大量に買いだめされている
- 通い慣れた近所のスーパーや銀行からの帰り道で迷った
- お金の計算や通帳・保険証の管理ができなくなり、「盗まれた」と疑う
- 季節に合わない服装(真夏に厚手のセーターなど)を着ている

【長谷川 式 スケール】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:検査にかかる時間はどのくらいですか?本人の負担になりませんか?
A1:通常、約10分〜15分程度で終了します。身体的な苦痛を伴わず、紙と鉛筆を使った複雑な作業もないため、高齢者にとって負担が非常に少ない検査です。面談の雑談の流れから自然に導入されることが一般的です。
Q2:長谷川式で28点〜30点の満点近くだったら、認知症の心配はありませんか?
A2:心配が完全にゼロとは言い切れません。 長谷川式スケールは主に記憶力と見当識を評価するため、初期の「前頭側頭型認知症(性格変化や万引きなどの反社会的行動が主症状)」や「レビー小体型認知症(幻視やパーキンソン症状が主症状)」では高得点が出ることがあります。点数に関わらず生活に支障が出ている場合は、脳神経内科やもの忘れ外来での詳しい診察が必要です。
Q3:病院の何科を受診すれば長谷川式スケールを受けられますか?
A3:「もの忘れ外来」「脳神経内科」「精神科」「心療内科」「老年内科」などで検査を受けることができます。どこを受診すべきか迷う場合は、まず地域包括支援センター(自治体の高齢者相談窓口)やかかりつけ医に相談し、適切な専門医を紹介してもらうのが最も確実なルートです。
Q4:検査を拒否する親を病院へ連れて行くにはどうすれば良いですか?
A4:「認知症の検査に行こう」とストレートに伝えると拒絶されるケースが大半です。「最近眠れないと言っていたから、かかりつけの先生に相談してみよう」「市町村の健康診断のついでに、頭の健康チェックも受けてみよう」など、本人の健康維持を目的とした前向きな言葉かけで受診を促すことが推奨されます。 (出典: 長谷川 式 スケール(Yahoo!ニュース))
まとめ:今後の動向と失敗しないための判断基準
長谷川式スケール(HDS-R)は、半世紀にわたり日本の高齢者医療を支えてきた信頼性の高いスクリーニング指標です。20点以下が認知症を疑う重要なカットオフ値であることは間違いありませんが、その数値は断罪のための道具ではなく、適切な医療や福祉サービスへとつなぐための「道標」に過ぎません。 近年は、早期アルツハイマー病の進行を抑える新規治療薬の登場や、デジタル技術を活用した認知機能チェックなど、医療の選択肢は急速に広がっています。だからこそ、変化に気づいた初期段階で専門医療機関につながることが何よりも大切です。 家庭内で白黒をつけようと焦ってテストを強要するのではなく、日頃のささいな違和感を優しくすくい上げ、専門医や地域包括支援センターと共に支えていく姿勢こそが、家族の尊厳と穏やかな暮らしを守る最大の近道となります。